スキップとローファー感想(1巻〜6巻)
お久しぶりです。
今回は『スキップとローファー』を語っていきたいと思います。ネタバレ普通にします。
もともと本誌で初期〜文化祭あたりまで読んでました。アフタヌーン買わなくなったので文化祭以降は単行本が初見。
◆ざっくりと
いろんなレビューや感想でみんなこう感じてると思うけれど、
「みつみと一緒に高校生活を送りたかった!」
ほんとこれに尽きます。
みつみほどの過疎地じゃないけど私も田舎生まれだし、私自身上京して初めて体験したこともたくさんあったからみつみの反応は「あるある」「わかる〜」な気持ちで見れるし、みつみの反応は高校生の反応だからまあかわいくてかわいくて。
でも私の上京は大人になってからだからナオちゃんの感情もすごくわかる。みつみが大好きな地元に自分は嫌な思い出しかないナオちゃんの葛藤すごく好きだし、嫌な思い出しかないけど好きな景色はあるってのも大好きで。
部活動系も恋愛物も大きな括りとしてある青春漫画というジャンルで、同じ年代の若者たちの共感を集めるタイトルは数あれど。
スキップとローファーは読ませたいターゲット層が確実に我らだよ。大人のための青春漫画。
◆みつみと志摩くん
私は。志摩くんみたいな男子は守備範囲外だし。高校生男子がクラスメイト女子のことを「○○ちゃん」と呼ぶ設定は個人的にNo!!!!!なんですが。
志摩くんの「みつみちゃん」はなんでこんなにかわいいの??????
このふたりの空気感は読んでて「恋の予感…両片思い…きゅん」じゃなくて「わんことにゃんこが一緒にお昼寝してる写真がTwitterでバズってる」みたいな感覚です。伝われ。
このふたり、「学年一のイケメン」「田舎者のみょうちきりん」って外見を評価されてる中で、互いに内面を評価して、自分にないものを認めて尊敬して信頼関係築いていくんですよね。その工程が終わった後に恋を意識していくのが本当にたまらん。
内面を評価するくだりは、別にふたりに限ったことじゃないけども。ここがスキップとローファーの真髄だと思う。
◆1巻
特に何があるわけでもないのになんでこんなに読みごたえがあるのか不思議。
1巻の終わりが「私はきっとこの場所を好きになります」で終わるのほんと策士!!
この文字を読んだだけで幸せな気持ちになるのは本当になぜ?どういう効果でこんなに幸せな気持ちになるんだろう?最終ページの渋谷の風景が本当に沁みる。西広の「サード越えるよ!」と同じくらいずっとこのページを見ていられる。
これは私が今世田谷に住んでて、志摩くんの「みつみちゃんが渋谷も東京も好きになってくれたら嬉しい」と同じ気持ちになれるからなのか?それとも、みつみと同じく田舎から上京してきて「この街を好きになった」からなのか?
わからないけど、登場人物全員が自分の分身みたいに思えるんだよ。
◆2巻
まず見て?!!!!!?!???この表紙見て!!!????!!
志摩くんみたいなアイドル系の顔は絶対タイプじゃないのに……志摩くんがこんな顔してると胸がときめく病気になっちゃった……いやだって君こんなふうに笑うキャラじゃないじゃん……本編でのほほんとした笑いしか見せんじゃん……何この顔……みつみと一緒にいる志摩くん楽しそうでほんと……そりゃあリリカも泣くよ。みつみと一緒にいる志摩くんほんと楽しそうだもん。
ちなみにこの2巻から本格的に物語に関わってくる兼近先輩が地味に好きです。なんかいちいち芝居じみたセリフ回しがツボ……。発言は芝居じみてるけど脳内セリフは素なのがまたツボ。「そんなこと言ったっけね」ってこんな些細な一言でクスッてなってしまった。
1巻ラストの言葉しかり、キャラクターのセリフしかり、とにかく紡がれる「言葉」がすごく好きでね。
高松美咲さん、コピーライターのセンスもあると思う。ここ一番のところで持ってくる文字が、ポエムじゃないんだけど詩的なの。詩的なんだけど飾ってないの。なのにキャラのセリフは「この感情をこう表現する!?」ってズガンとやられる。もう神。神尽くし。
◆3巻
みつみの初帰省がある巻。田舎の風景とか家族との会話とか同級生との会話とかすべてがリアル。でもね、一番言いたいのはそこじゃないの。
この、みつみの帰省を、「トロトロの帰省」とネーミングするセンスよ。みつみと読者を蕩けさせる画力と表現力と感受性。
初めて読んだときは本当に衝撃だった。スキップとローファーは東京の街を好きになるお話だと思っていたから。真逆のメッセージを伝えてきた。このタイミングで。
「尊い」って単語をシナリオに対して言わせていただく。
西広の顔が尊いとか、西広の葛藤が尊いとか、西広の境遇が尊いとか、西広の手が尊いとか、西広の耳の裏が尊いとか、西広のセリフが尊いとか、西広のカッターシャツの襟が尊いとか、私の人生ずっと言ってきましたけれども、(早口)
スキップとローファーという物語のシナリオ設計には、記憶の奥深くから目覚めたような尊さを感じる。この尊さは自分が過去から持ってきたものだとさえ思う。
みつみや志摩くんやナオちゃんや兼近先輩というキャラクターたちを好きになる過程で、自分自身のことも好きになれる。
スキップとローファーの登場人物たちも、みつみにそういう影響を受けているでしょう?
◆4巻
この表紙の構図めっちゃ好きで~~~~!!!!西ひだでトレスしたい!!!!!みつみの服もナオちゃんセレクトでかわいいし、この志摩くんの角度の西広絶対かっこいいじゃん。リュックなのもよき。
さて文化祭回。クラスの出し物が演劇になったときに演目がサウンドオブミュージックになるあたりがまたリアルに進学校らしくて素晴らしい!!ここでベタベタにロミジュリとかディズニープリンセス系になってたら私の高松美咲崇拝は瞬間で手のひら返ししてたと思います。
サウンドオブミュージックという演目も志摩くんの成長のためのエピソードのひとつなので、だからつまりやっぱりシナリオが尊いのだ…。
主人公のみつみが生徒会の仕事を全うする描写もあって、実際演劇に直接関わらないし、ちゃんとキャラクターの性格に合わせて配役や裏方の役割を選ばせてて良かった。誠に至っては描写すらされないあたり徹底されてホント良き。
(大体ベタベタな少女漫画だと、偏見だけど、くじ引きで配役決めて絶対演劇とかやるタイプじゃないキャラを無理やり主役にして、演目は白雪姫☆キスするだしないだ☆みたいな展開になったり、メイン配役が全員レギュラーキャラだったり、生徒会の仕事そっちのけでクラスの方に顔出したりするから、そうならないのがマジで素晴らしいという話)
んで軍服萌えの私は志摩くんのロルフ衣装で心臓に矢を刺されました。無理です。
◆5巻
演劇部に入った志摩くんがにこにこしてる世界が平和。それを見てみつみが好きだなあって思う世界が平和。兼近先輩と志摩くんが先輩後輩の力関係なく交流してる世界が平和。もう何もかもが平和。
「席が隣で、友達で、今はこれでじゅうぶんだなあ」
わかる~~~~~~~~~~~~~!!!!!
これ西ひだ語りで嫌というほど主張してきた理想の高校生の青春なんだって!!!!!!!!
そして身悶え&息切れしながら読んだクリスマスのエピソード。
「そう思わせてもいいやって思ってた気がする」
悶……ッッ私が人生で読んできた小説や漫画の文中の言葉で正直一番ときめいた……………。
いや個人的には西ひだの「いい加減はっきりしようと思う」が私至上最大の性癖を詰め込んだセリフランキング1位なんだけど、これは自分の創作なので。
他人の言葉でこれほどときめいたことはない。
性癖ど真ん中なんだよ高松美咲節……「席が隣で友達で今はこれでじゅうぶんだなあ」「そう思わせてもいいやって思ってた気がする」って、声に出した時のリズム感も情感も完璧なんだって………短歌とか自由律俳句とかなんだって……もうほんと好き~~~~~~。何が好きって高松美咲さんが好き……。
◆6巻
バレンタイン回。ミカちゃん、ミーハーなだけかと思ったら本気で好きだったんだな……となった。
スキップとローファーは基本的にみつみ視点で進むので、みつみから見た志摩くんは1巻からずっと「スマートで都会的で優しくて実家の犬に似てる」感じの男の子。イラストとしても、いつもニコニコしてて物腰柔らかくてかわいらしくて高校1年生っぽさがあって、ソフトな線で描かれてることが多い。
「ちゃんと友達になるの初めてかも」のシーンで唐突に解像度が上がって(志摩くんがシャープな線で描かれて)、みつみが初めて志摩くんを意識したわけだけど。
で、今回のミカちゃんの「私の浅ましさなんかお見通し」のシーンで描かれてる志摩くんも、すごい解像度が高いよね。
みつみが志摩くんを意識した瞬間の解像度で、ミカちゃんには常に見えてたのかな。この志摩くんは絶対犬じゃないし表情と視線も冷めてて高校1年生には見えない。みつみとは志摩くんの見え方が違う。人には人のフィルターがあるんだなぁって。思いました。
ちなみに文化祭あたりの志摩くんはこの中間くらいのタッチで描かれてて、たぶん文化祭エピソード時の志摩くんが一番本人像に近い「素」なんだろうな。と思いました。(文化祭は志摩くん自身のエピソードなので)
んで6巻の終わりが1巻の終わりとリンクして「もう知らない土地ではないからです」で締めるのがまた神ですね……。
とりあえず感想戦は以上です。
なんか思った以上にがっつり書けた。
6巻が先週発売したばかりだけどもう7巻が待ち遠しいよ~~~~。
あ、あと、高松美咲節に惚れ込み完全にファンになったので、『カナリアたちの舟』も読みました。今度カナリアたちの舟の方も感想と考察を書こうと思いますー。