トラペジウム 感想

シネマイレージの更新が近づいてて、映画サイトを頻繁にチェックしてたんですよね。

んー。漫画原作オタク向けのアニメ映画は求めてないなー。NiziUが主題歌とはいえ恋愛映画はさすがになー。ホラーはあんま興味ないなー。お、小説原作のアイドルアニメ?ほーん。あらすじが面白そうならこれを観ようかなー。………いやー……あらすじ読んだけど全然面白そうじゃないな………。っていうのが、映画公開前の私。

しかしいざ公開日を迎え、投稿されたレビューの数々と公式YouTubeを観た私は、「主人公の性格終わってるし、それが滲み出る表情が闇深すぎる……何コレめっちゃ観たい……」と手のひらくるくるぱーになった。

ってことで観てきた。

結論、期待値超えておもしろかった。

 

ネタバレしてます。ご注意ください。

 

トラペジウム(角川文庫)- 高山一実

 

まず主人公について。

主人公の人間性が終わってるという噂を聞いて楽しみにしていたのだけど、実際は別にそこまで酷くなかった。人と笑顔で対話ができるコミュ力があるし、教室に入る前に笑顔の練習するし、敬語使えるし、計画性と行動力が伴ってるし、やることはちゃんとやってるし。(ボランティアで計画が崩れたとき、不機嫌になりながらもちゃんとボランティアは最後までやってたから…笑)。

これ擁護しちゃうんだけど、計画が崩れたときにムッてなっちゃうのはある程度は仕方ないのよ。計画を立ててるからこそ。そしてそれを机上にせずにしっかり行動してるからこそ。だから気持ちはわかる。

じゃあ主人公の何がダメだったかと言うと、その計画を秘密裏にやっていて、みんなを騙し討ちする感じだったからだと思う。

 

これ驚いたんだけど、あらすじ読んだ時点では、普通に「一緒にアイドルやる子を東西南北から探す」んだと思ったんですよ。

アイドルやりたがってる子を各地域から探して、誘って、アイドルグループ結成するんだと思ったの。だから予告PVみたいに彼氏発覚とか険悪な展開になって「アイドルやりたいくせにアイドルの覚悟がなかった」みたいな物語だと思ったんだよね。

でもそうじゃなかった。

実際のストーリーがどんなかというと、「東西南北で構成されるグループ」をとりあえず作って、最初はみんなの興味のあることにも付き合ってあげて仲良くなって、あとは策略と戦略でうまいこと周囲から持て囃されるように仕立て上げて「さも偶然に導かれたようにアイドルに成り上がる」という流れだった。

度肝を抜かれた。他の3人からしてみりゃ、ただの友だちのはずだったのに、なし崩し的にアイドルグループにさせられてたって話。たまったもんじゃない。前情報で主人公がヤバいって評されるのはこのあたりが理由だよね。

まぁ、だからうまくいくはずもなく、、、というヒューマンストーリー。

 

最初にあらすじ見たときに「つまらなそうだな」って思った理由のひとつとして、「どうして東西南北にこだわるのか?」の答えがなさそうだったからなんだよね。

でも、これは考察の域を出ないけど、「どうして東西南北にこだわるのか」の答えは明確にあって、「自分がグループを構成する要素でいられる絶対的なコンセプトを作りたかったから」だよね。

オーディションはダメだった。自分1人じゃ受からなかった。じゃあどうすればいいか。他の素質ある子たちと切っても切り離せないコンセプトを作って便乗するしかない。そうまでしてでもアイドルになりたい。どんな形でもいいからアイドルになる。プライドはない。

正直その執着は狂気だと思うけど、ちゃんと道筋立てて考えてるし口だけじゃなく行動してるから、私はこの主人公嫌いじゃない。

亀井さんもそうだと思う。酷いことを言われたけど、過去に自分を助けてくれた主人公のことは今でもヒーローだろう。

華鳥さんもそうだと思う。何もなかった自分にいろんな世界を見せてくれて、結果として将来の夢を与えてくれた主人公は友達と呼んでいいだろう。

でも唯一、くるみちゃん視点で考えたら、私は絶対に主人公のことを許せない。

警戒していた自分に、ロボットやプログラミングに興味があると巧妙な嘘を言って近づいてきた。そんで気が付いたらいつの間にかアイドルに仕立て上げられていた。踏み台にされた。"友達の優しさ"だと思っていたあれもこれも全部、打算の善意だった。

私だったら許せない。せめて一言「一緒にアイドルやりたい」って言ってくれたらまだ違ったと思う。

 

だから個人的にはくるみちゃんが限界を迎えて発狂するシーンが1番良かった。

公式PV、亀井さんの彼氏発覚と華鳥さんの断言からの主人公の狂人ムーブはあるのに、くるみちゃんの発狂シーンなくない?

やっぱあれが見せ場なんだよ多分。正直あのシーンだけはもう一回観たいもん。

 

ところで、テレビ出演→アイドル計画→事務所所属って都合良すぎん?って一瞬思いかけたんだけど、これ別にご都合主義でも何でもなくて、ちゃんと棚からぼたもちが落ちてくるように設計されてたシナリオなんだよね。展開が破綻していないところがすごいと思った。

テレビ出演したのはそもそも主人公がテレビ取材が入るところを狙ってボランティアしたからだし、主人公はそもそもアイドル適性ある3人を選んでるわけだし、テレビ関係者が「アイドル適性ある素人を企画に使おう」「アイドル適性ある子をアイドルにして売ろう」って発想するのは至極当然のことだし。主人公のプロデューサーとしての能力が高すぎてご都合展開に見えてしまう罠。

そう考えるとストーリーは一貫していて、完成度高いと思う。

 

 

でもあえて触れるなら、主人公以外の3人は歌が下手だからって口パクにさせられてたのにラストのアカペラめっちゃ上手だったのは萎えた。

 

『トラペジウム』オリジナルサウンドトラック(初回仕様限定盤)

 

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来場者特典もらったよ。